【概略】
製品・情報デザインの応用課程としてこれまで学習してきた技術や知識をベースに、ユーザーの嬉しい体験の創出を目標とした、人間中心設計(Human Centered Design)によるデザイン提案方法を学ぶため、日常の生活体験に関わるテーマに対し、提案デザインの根底となるユーザーニーズの分析、コンセプトの立案から、プロトタイピングによる視覚化、デザイン評価までのサイクルを実践。
【テーマ】
一人暮らしの楽しい食生活をデザインする​​​​​​​
ユーザーの健康と楽しい食生活を支援するプロダクトやサービスの提案
理想的な食事(環境・食品・時間・食べ方・料理など)を実現・提供する、アイテム、システム、サービスを考える
【問いの設計:半構造的設問設計】
ポストイットに今回のテーマの目的を書き出し、その目的を分類していく。分類された目的から次は質問の形で書き出していく。さらに、目的に対して、具体的な問いを考えていく。
(例) 「体調を維持する」に対する考え方を知る→いつから?、どうして?、本当はどうしたい?→「考え方のきっかけ・理由」を知る、「できないこと」を知る、「本当はこうしたい」を知る。
【デプスインタビュー】
デプスインタビューでは、【問いの設計:半構造的設問設計】でまとめたことを元に、実際に一人暮らしをしている人にインタビューを行う。今回は、2人に15分×2セットでインタビュアー、サブインタビュアー、レコーダーの役割を割り振って行った。深堀と拡張(具体的な質問⇔抽象的な質問)を意識し、インタビュー中に判断しないことに注意しながら記録を行なった。
【インサイトの発見】
デプスインタビューを通して、気づいたことや発見したことを元に、このテーマに沿ったインサイトを見つけていく。
インサイトを得るプロセスは、「データを選ぶ→関連するデータをつなげる→つながりを解明する→解釈を元により大きなフレームや意味を見出す」といった過程であり、理解と釈明をしていく。デプスインタビューの具体的な発言(ファクト)から、その背景にある、ユーザーの「心の声」を釈明し、普遍的に通じる本質的価値に置き換えていく作業=「ユーザーの価値を抽出する」を実行した。特徴的な出来事を複数抜き出し、その作業の一つ一つに含まれるユーザーの価値を釈明していった。→価値カードの作成
【価値マップの作成】
インタビュー(2名分)の事実から、「心の声」を読み解き、その背景にある価値を抽出したら、各価値カードを統合して、普遍的・本質的価値として構造化を行い、指向性を見出していった。
【主役ペルソナの作成】
いい製品・サービス体験のデザインに必要な要素として、「誰に?」「どんな価値を?」「どのように提供する?」かを考え、「私にとって最も大切な人」が重要なユーザーであることから、その人をイメージする主役ペルソナを設定していった。
ペルソナを設定するメリット
①人物像が共有できる
②ユーザーの視点かで考えることができる
③インサイトが得られる
④提供すべきユーザー体験がイメージできる
【カスタマージャーニーマップの作成】
ペルソナにとっての理想のストーリーを描くために、ユーザーの期待や解決したいこと(ニーズ)を製品やサービスと触れ合う経験軸上に最適に配置していく。(カスタマージャーニーマップの作成)
As Is (現在の状態) → To Be (理想の状態)
【コンセプト作り】
ジャーニーマップから、ペルソナのニーズを満たすことができる「コンセプト」を作成した。

コンセプトボード
○○○○○○の
○○○○○○を解決する(を充足させる)
○○○○○○な製品(なサービス)
【ブレーンストーミング法を用いたデザインアイデアの抽出】
ペルソナの理想の食生活を実現するための、製品・サービスのデザインアイデアをブレーンストーミング法で出していく。
【アイデアとプロトタイプ】
コンセプトに掲げたものは、「自炊したくないけどしたい一人暮らしの大学生」で、自炊を本当はしたい気持ちがあるが、面倒であったりなかなか気持ちが乗らずに自炊できない心理においてモチベーションを奮起させるモノやサービスを提案することである。
私は、ペルソナの趣味や性格、生活スタイルに着目し、普段の生活において依存していると思われるスマートフォンで、アプリケーションから自炊に対するモチベーションが上がらないか提案した。自炊を継続させるプロセスを項目ごとに書き上げ、「共有」、「催促」、「目標」、「競争」「賞与」、「個別」といったように、これらの要素が入ったサービスを展開できないか考えた。
今回は、Adobe XD を使ってプロトタイプを製作した。アプリケーションの名前は、「Clip Cook」である。ペルソナが普段から見ているSNSをベースに考案した。サービスの仕組みは自炊の様子をアップロードし、投稿についた「いいね!」の数が調理器具へ還元されるというものだ。また、ユーザーが目標を持ったり、他のユーザーに対しての競争心を持ってもらったりするために、「Challenge」「Ranking」「Event」といった機能、ユーザーの気になった自炊レシピを保存する機能も搭載した。
プロトタイプは こちら (外部ページ)
【発表・感想】
今回の課題を通して、製品やサービス考える上で重要な過程を学ぶことができた。アウトプットよりも、ユーザーが求めているニーズや、筋道を立てて整理して考えるプロセスの流れの大切さを知ることができた。アウトプットももちろん大事なことだが、そこにたどり着くまでにどのようにすれば良いのかを試行錯誤する時間に長い時間を使うことで、より仕上がったデザインの本当の魅力が生まれるのだと感じた。
自分の製作をデプスインタビューを受けて頂いた二人に発表し、その感想を表にまとめた。
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